私の仕事は、その人の今を輝かせること

Report 7

ドリームマップを高齢者の
ケアサポートに活かしたい!

秋田 桃子(あきた ももこ)さん
(有)耕グループ 高齢者施設 職員

秋田 桃子(あきた ももこ)さん (有)耕グループ 高齢者施設 職員

ドリームマップを描いた3年後の夏、転職して恵那市岩村町に移住、築200年の町家を借りて住むという大きな転機を迎えた桃子さん。まず、ドリームマップを知ったきっかけから教えてください。

秋田桃子さん

ドリームマップは、発案者の秋田 稲美さんの講演会を東京へ聴きに行った2009年に知りました。当時、私は大手印刷会社の事業企画室で働いていて、社員教育や女性の活躍推進に関心のあった時期でした。社内研修に有効なツールがあると会社に提案したところ採用され、新入社員や営業職の女性スタッフなどを対象にドリームマップ研修を実施しました。私自身は、2010年春にドリマ先生になりました。

社内研修にドリームマップを取り入れたいと思ったのはなぜですか?

「働く」ということが、どこか他人事になっていないかな?と思ったのが一番大きいかもしれません。周囲を見回しても、毎日目の前の仕事に追われていたり、生活のためなど仕事が目的となってしまっていて、人生のなかで「今、自分がこの仕事に携わっているというのをどう位置付けるか?という視点が薄れてしまっているように感じました。働く意味がもっと自分のなかで深まれば、より主体的に仕事に関われるようになり、結果として社員にとっても会社にとってもWin-Winになると考えました。

ドリームマップ研修をした手応えはいかがでしたか?

印刷会社ということもあり、夢をビジュアル化して表現するドリームマップは、社内の反応が非常に良かったです。新人研修で作ったドリームマップは、自己紹介を兼ねて廊下に掲示していたのですが、関心を示してくださる方も多くて、他部署と交流するきっかけになっていました。

その頃、桃子さんご自身はどんなドリームマップを作られていたのでしょう?

当時、私は3年後のドリームマップを作りました。「田植えをしています」や「地域に根ざした生活」・「地産地消の食事」・「文化の継承」・「着物を着て楽しんでいます」というキーワードを描いていましたね。

それは、まさに自然豊かな城下町で和髪・着物姿で暮らしている今の生活そのものなのですが、その時はまさか自分が転職・移住するなど思いもよりませんでした。けれども、描いた通りの3年後に自然な成り行きで全てがトントン拍子に決まってゆきました。自分の心の声をドリームマップでアウトプットしたことで、そういう流れになったような気がします。

転職・移住を決断するに至った理由はなんだったのでしょうか?

数年前から「多世代交流で地域の活性化をしたい」と思うようになっていました。そんな話をドリマ先生仲間の友人にしていたところ、今の職場である高齢者福祉施設を紹介してもらえることに。施設では地元の方々に開放して文化交流ができるスペースを新設、これから運営を始めようというタイミングで、まさにこれは自分のやりたい仕事だと感じました!

移住先の岩村が歴史と文化が町並みとして残る街道沿いの城下町だったため、もともと着物が大好きだったことを活かして、和髪を結い着物生活をスタート。業務に差し支えのない日は施設でもこのスタイルです。利用者の方々は、みなさん若い頃に着物や袴で過ごしていた世代なので教わることも多いです。認知症のある方にも、着物姿なので顔を覚えていただけるのが嬉しいですね。

先日、施設の利用者を対象にエンディングドリームマップ講座を実施されたそうですが、まずエンディングドリームマップについて教えていただけますか?

秋田桃子さん

エンディングドリームマップとは、自分の人生の「エンドゴール」を見つめるドリームマップです。私はドリマ先生養成講座のワークのなかで初めて描きました。どんな旅立ちにしたいかを考えると、どう生きるかが決まってきます。

今回の講座では、80代後半から92歳までの3名の方に参加していただき、休憩を挟みながら約2時間使って「行きたいところ」・「欲しいもの」・「これまでに頑張ったこと」・「どんな人達に囲まれて、どんな雰囲気の場所で暮らしたいか」などドリームマップの「四つの視点」の核になる質問についてヒアリングしました。ご高齢の方に負担にならないよう台紙に貼る作成作業は私が代行する形をとりました。

初めての試みだったそうですが、終えてみての感想や気付きを教えてください。

ヒアリングでは、地元で女性第一号として運転免許を取得したお話、歌が好きでカラオケサークルを楽しみにしていること、隣県までお墓参りに行きたいと思っていることなどを伺うことができました。

娘時代に袴姿でお勤めしていた92歳の方には、行事の時に袴でおしゃれを楽しんでいただきました。これも職員がその方のドリームマップを見て率先して企画してくれたことです。

見える化できるというのは、社内研修のときにも感じましたが伝える力・共有する力になります。やはり一番の目的は、施設のサービス向上なので、利用者様一人ひとりの思いやその人の背景を教えていただくことで、職員がお手伝いして実現出来ることをもっともっと探していきたいです。

認知症のある方でもドリームマップを描いてもらうことは可能なのでしょうか?

はい。丁寧にヒアリングしていけば可能だと思います。認知の方は記憶が持続しない方もみえます。ですが、質問に答えてくださるときには、表情が変わって瞳が輝いていました。「自分のことを深く聴いてもらう機会」というのが貴重なのだと思います。逆に言えば、そういうケアがまだまだ不足しているということでもあります。

「その人の今を輝かせること」……それが私の仕事だと思うので、まずは一人ひとりの言葉に耳を傾ける「場」と「機会」をこれからも増やしてければと思います。

今の仕事が、天職だという桃子さん。子どもの頃の将来の夢は何でしたか?

子どもの頃は、この職業というのがなく漠然としていました。小学校の卒業文集に、将来の夢を書かないといけないコーナーがあって、悩みながら書いたのが「宣教師」でした!(笑)改めて考えると、私の根幹には「伝えたい!」という思いがあるんだなぁ、と。ドリマ先生もそうだし、この岩村という土地も暮らしてみてとても好きになったので、その良さを発信して多くの人に知っていただけたら嬉しいです。

最後にドリームマップに興味を持たれた皆さんへ一言メッセージをお願いします。

秋田桃子さん

岩村に生を受けた、幕末の大儒学者 佐藤 一斎の残した「三学戒」と呼ばれる言葉があります。「少くして学べば壮にして為すことあり。壮にして学べば老いて衰えず。老にして学べば死して朽ちず。」

「若くして学べば、大人になって社会や人のために役立つ人間になる。壮年になって学べば、年をとっても衰えない。年老いてもなお学ぶなら、死んでもその精神は永遠に残る。」という意です。ドリームマップは、人生のなかで問い続け、学び続けるためのゴールを描くツールだと私は思っています。年齢に関わらず誰もが作れるし、誰もが気持ち良く生きるためのサポートになるのではないでしょうか。

桃子さん、ありがとうございました。