自分を“かけがえのない人”だと気付くために。

Report 6

障がい者のキャリアデザイン講座に
ドリームマップを導入!

佐藤 惠子(さとう けいこ)さん
一般社団法人障害者就労支援協会 代表理事

佐藤惠子さん 一般社団法人障害者就労支援協会 代表理事

まず佐藤さんがドリームマップを知ったきっかけから教えてください。

佐藤恵子さん

ドリームマップとは2008年に出会いました。当時、私は研修会社でセミナーの企画・運営スタッフをしていて、担当する企業研修プログラムのひとつにドリームマップ講座がありました。個人的にコーチングやNLP心理学などにも関心を持っていた時期だったので、「これは自分も学んでおきたい講座だな」と思って受講を決めました。ドリマ先生の養成講座は東京での開催でしたが、青森など遠方からの受講者もいて、同期メンバーがパワフルな女性ばかりだったのが印象的でした。

初めて作ったドリームマップにはどんな夢を描かれたのですか?

3年後のドリームマップとして、2011年9月時点の夢を描きました。その時、なにげなく「住みたい社会・社会への貢献」のスペースに書き込んだのは「高齢者福祉・障がい者雇用安定」という未来イメージでした。準備した切り抜きも少なく、思うままにその場で貼って完成させたものでしたが、描いた10ヶ月後には思わぬ急展開で障がい者就労移行支援事業所の代表取締役となり、障がい者雇用に直接携わることになっていました。

また、欲しいものとしては「駅ソバで便利な高層マンションが私の事務所兼自宅です」と書きました。その後イメージに近い物件を見つけて、念願の都心に引っ越すことができました。ただ間取りについては書き忘れていたので、想像していたのより少し狭かったのですが。(笑)

それはすごいですね!障がい者就労移行支援事業所を開所された経緯を教えていただけますか?

研修会社を退社後、ハローワークというものに行ったことがないので行ってみよう!と思って出掛け、障がい者就労支援の求人票が目に留まりました。ちょうど障がい者自立支援法が改正された時期で、その後に仲間と今の事業所「コンフィデンス日本橋」・「コンフィデンスこうじまち」を立ち上げることになりました。20代で実家のタバコ小売店を受け継いだところから牧場経営、地場産品の企画開発会社の起業など、様々な形で経営や組織の立ち上げに携わってきたので、これまでの組織作りのノウハウを活かせればと思い奮闘しました。

ドリームマップに書き込んだ当時は本当に無意識だったので……なにか具体的な計画があったわけではありません。思い当たることといえば、嫁ぎ先が牧場を営んでいたので、結婚後20年間農家の嫁として働いていたときに職親(しょくおや)として住み込みの知的障がい者を2名受け入れていたことです。彼らと寝食共にした協働生活が「障がい者の雇用安定」という夢に結びついたような気がします。

両事業所の概要や現在の取り組みについて教えていただけますか?

事業所では、障がい者の就労サポートとして、面談やキャリアデザイン講座、履歴書・職務経歴書の書き方や面接の準備、ビジネスマナー講座などのほか、事務スキルやPCスキルの習得フォローを行っています。

ドリームマップは、キャリアデザイン講座(目標設定)の一環として取り入れており、通所している方全員が年1回作成します。また、毎週2時間ほど時間を設け、ドリームマップの軸となる「夢をかなえるワン・ツー・スリーの法則」や「PDCAサイクル」の理論に基づき、個人目標の設定・振り返りも習慣化していますね。この時間は支援スタッフ全員が同席するので、個人のゴールラインを共有してサポートに活かすこともできます。

どちらも就労後に職場に定着・安定し、自立した人生をおくるための重要なコンテンツになっています。

毎週2時間かけて行うというのは、頻度が高いように感じますが?

佐藤恵子さん

そうですね。カリキュラムでは「無自覚でやっていることを自覚する

というのを意識して行っています。

たとえば、事務職系を目指す方が多いので、紙の三つ折りやホッチキス留めなどの事務作業も実際に行うのですが、「これで新しいことが出来るようになったね。」というと「出来ないです。

という声が返ってくるんです。でも本人の前には完成した束がいくつも積み上がっています。

そこで、もう一度「じゃあ、これは誰が作ったの?」と訊くと、遠慮がちに「……わたし。」と。そこでようやく自分で出来ているんだ、と気付ける。だから作業の終わりには、「私は三つ折りが出来ます!」と声に出して宣言してもらうようにしています。

そうやって言葉に落としこむことで、自分にできることが明確になり、自己肯定感を持つことに繋がります。ドリームマップも夢を宣言して自覚する発表の時間があるのが大切だと感じますね。

障がいを持つ方がドリームマップを描くなかで印象的だったことはありますか?

作ることで気付きの生まれるツールだと改めて感じました。事故で後遺症の残った方が「僕も、もう一度夢を持っていいんだ。」と言われたり、精神障がいの方が「去年は物しか貼れなかったのが、今回は人の写真もたくさん貼れるようになりました。」と報告してくださったり。高機能自閉症の方が「将来、結婚するっていうのもいいかなぁ。」と新しい自分に気付く人もいました。

先天性の障がいを持っていると、小さい頃から自分を出しちゃダメ!と親や周囲に言われながら育つことも多いようです。描いたドリームマップをビリビリに破ったり、ダークドリームマップだ!と言ってわざと「悪いことをして有名になりたい等と書いたりするケースもありました。でもそれも現在の状態なのだと、全てを受け取ることにしています。1度目は描けなくても、2度目は準備をして笑顔で作成する姿を多く見てきました。

なるほど。その時の心の葛藤が、ドリームマップというツールを借りてアウトプットされたのですね?

はい。ですから、うまく作れなかったとしても、作る側も伝える側のドリマ先生も1回で懲りないことです。誰しも無限の可能性を持っている。今日の気分、今日の私というのを確認するだけでも充分意味があります。

夢を描くことは、障がいの有無に関わらず、人として許されている当たり前の自由なのです。ドリームマップを描く日は、自分をとことん知って、自分を大切なものにする日だと思っています。

自分を大切なものにする日」とても素敵な言葉ですね。最後に、佐藤さんの今後の新たな夢を教えていただけますか?

佐藤恵子さん

農場での職親経験から、開放的な空間のなかで障がい者と一緒に働きたいという思いがあります。知的障がいのある方は、とても純粋である種の癒しの力を持っているんですね。彼ら彼女らのそういう潜在的は良さをもっと活かせる場を作りたいです。それから「ドリマカフェ」という夢を語れる対話の場も広げていければ嬉しいです。

ドリームマップに描いたことは、どんな形で現実化するのか予測不能な部分があるので、何が起こるか分からないのを楽しみながら、これからも自分とドリームマップを信じて身を任せてみたいと思います。

佐藤さん、ありがとうございました。